" ACOM_2000A_AMPLIFIRE ACOM 2000A フルオートマチック リニアアンプ


正面 電源スイッチ以外何もありません!! 通常の電源オンオフはリモコンのボタンで
行いますから、このスイッチも普段はオンのまま。


上面 前面パネルとサブパネルの間の狭い(薄い)空間に、このアンプの心臓部とも
いえる、マイクロプロセッサ基板、ステップモータ等が収められています。
外側の蓋をかぶせると、チムニー上部の排気口、トランス後ろの吸気口以外、開口部は
無いので、そこの通気性さえ考えれば、かなり狭い棚等に押し込んでも平気です。


RFデッキ部 ファンの音は、すこぶる静か。このアンプと較べると、IC-PW1が
ものすごく騒々しく感じられる程。あまりに静かなので電源の切り忘れに注意!


タンク回路 しっかりした造りです。


電源部 右側の大きいのが高圧トランス。上に見えるのは取り外す時のためにバンド状の把手。
左側は、多段構造になっている電源基板ユニット、そこに入り込んでいるのが低圧トランス。
 

このACOM 2000A、素晴らしいアンプなのですが欠点(欠陥)が一つだけあります。海外のアンプ関係のサイトでも話題
になったこともあるようですが、ヒーター配線用のコネクタが焼損してしまうという(かなり重大な)欠陥です。
基板とヒーター配線を繋ぐコネクタが、一本あたり 3.6Aのヒーター電流に耐えられずに過熱、接触抵抗が増大し電圧降下を
起こし、更に過熱するとプラスチックのコネクタが焼け焦げ、接点間の導通もほとんど無くなってしまうというものです。

このアンプは、各部の電圧、電流、電力他 20種類くらいのデータを計測し、コントローラのディスプレイに表示、あるいは
異常値を検出して各種警告、プロテクションを動作させるなど、賢い作りになっていますが、 私が中古で入手してしばらく
使用していたら、「HEATER」警告のLEDがたびたび点滅するようになってしまいました。

ディスプレイでヒーター電圧、ヒーター電流(2本個別に測定出来る)を表示させてみると、正常時は電圧は 12.6V、
電流は 1本あたり 3.6Aなのですが、11.6V、3.5Aあたりまで低下、更にパワーを入れると ACライン電圧が下がるため、
11.2V、3.4Aあたりまで落ちてしまっています。この状態では、まだプロテクションは働かないものの、「HEATER」
警告のLEDは時々点滅ではなくほぼ点灯しっぱなしになってしまいます。
この状態でも、一応動作はしますがカソードのエミッションが相当に低下しているわけで、出力特性にも影響が出ますし、
(いくらヒーター電圧は若干低めの方が寿命が延びるとはいっても)球の為にも無理がかかって良いはずはありません。

前述の情報は知っていたので、「ついに来たか」と思い、ケースを開けて中を見てみることにしました。
正面から見て左半分が RFデッキ、右半分が電源関係になっていますが、右側フロントパネルに近い側に 3階建てくらいに
なった電源基板があり、ヒーター電源は、そこの一番下の基板に低圧トランスからの入力コネクタおよびチューブデッキへ行く
出力コネクタが付いている模様です。高圧トランスが邪魔で見えにくいので、一旦取り外しました。
これは、かなり重量がありますがコツさえつかめば 4本のデカいボルト(および何カ所かのコネクタ)を外すだけで
降ろすことが出来ます。高圧トランスはACライン入力電圧設定用のショートバーを変更するときにも降ろす必要があり、
経験済みだったので、割りと簡単にできました。

よく見ると、電源基板に4ピンの白いプラスチックのコネクタで接続するようになっているところが 2ケ所あります。

(1)電源コントロール基板の入力端子。(ヒータートランスからの配線を接続)
(2)電源コントロール基板の出力端子。(RFデッキへ行くヒーター配線を接続)

このうち、(2)は何とケーブル側のコネクタが除去され基板側のピンに直接ハンダ付けされていました。基板側の
ピンの根本の白いプラスチック部分には若干変色した跡が残っていましたから、ここは前オーナーが既に対策をした
という事なのでしょう。

となると、残るは(1)のコネクタですが、ここは見た目には変色していません。今度は低圧トランスが邪魔になるので
これも取り外しました。これもトランスのフレームを固定している 4本のボルトを外せばよいはずなのですが、それでも
外れません。大きなボルトの間にある小さなビス 2本(3階建て電源基板のベース部まで貫通している)を外せばよい事が
わかりましたが、これはちょっと盲点でした。低圧トランスとシャシーとの隙間が狭いのでちょっと苦労しますが、ドラ
イバか何かでこじって、うまくくぐらせるようにすれば、何とか取り出すことが出来ます。

(1)のコネクタをしっかり点検するためには、電源基板ユニットを取り外しバラす必要(コネクタを引き抜くには上の
階の基板との間隔が狭いし、一番底の基板の裏を見るためにも)があると思い外しにかかりましたが、これはかなり厄介
でした。シャシー裏のビス 10数本を外しユニットごと外し、さらに外したユニットを分解する必要がありました。

※※ 後で判ったことですが、ヒーターのコネクタを抜き挿し、もしくはハンダ付けするだけだったら、ここまでバラす必要は
無かったようです。若干斜めになりますが無理やり抜き挿ししても大丈夫なようです。 ※※

さて、(1)のコネクタですが、抜いて見ても接触部はきれいな状態、テスタで当たってみても導通は問題ありません。
とりあえず、コネクタ、カプラ用の接点清浄・復活剤で処理し、元どおり組みつけました。
結果、ヒーター電圧は僅か上昇したかのように見えましたが、まだまだ低めです。この状態でしばらく使用していたら、
更に事態は悪化。今度は警告の LEDが点くどころではなく、プロテクションが動作してシャットダウンしてしまいます。
ディスプレーには「HEATER VOLTAGE TOO LOW」のメッセージが。
さあ、困ってしまいました。(1)のコネクタを手で押さえつけてみても、状況は変わらず。鰐口クリップを使って
コネクタ部分をジャンパしてみましたが変化無し。

前述の海外サイトの書き込みを見ても、「コネクタ 2ケ所」と読み取れますし、他に見えるところにはヒーター配線の
接続部分はありません。

そこで、球のソケット部分はどうなっているのか? と思いチューブデッキの底面の蓋(シャシー裏底のビス数本を外せば
外れる)を外してみました。何とそこにも同様なコネクタがあったのです! てっきりチューブデッキに入ったヒーター配線は、
直接ソケットにハンダ付けされているものと思い込んでいましたが、一旦小さな基板を介しており、そこにコネクタが
あったのです。
(多分この基板上で球の各部の電圧等のセンシングをしているのでしょう。電源基板側でなくピンの直近で計測するという
信頼性重視の設計なのですね)
はい!ここのコネクタが見事に「真っ黒焦げ」になっておりました。コネクタからケーブルを外し、基板のピンに直接ハンダ
付けしたところ、見事に復活。ヒーター電圧 12.6V、電流各 3.6Aと定格通りに回復いたしました。
 

しばらく、これでうまく働いていたのですが、最近またヒーター電圧が低下気味になります。警告 LEDが常時点滅するという
程ではないのですが 12V以下に落ちてしまっています。
久々に蓋を開け、例の(1)のコネクタを見るとプラスチック部分が僅かに茶色っぽく変色しています。接点清浄・復活剤を
棒の先で上手に垂らしこみ、ドライバの先でコネクタをグリグリと押さえつけてみたところ、とりあえず 12.6Vに回復しま
したが、やはり最後に残ったここが問題になってきたようです。近いうちにハンダ付け処理をしないといけないようです。
 

教訓:3ケ所あるコネクタが全部同時に焼けることはないが、どこかを直すと、次の部分が焼ける。結局全部改修作業を
しないと駄目! 確かに「同じ規格のコネクタ」に「同じ電流」を流しているわけだから、条件は同じはずですからね。

(追記)
ついに、3ケ所目も完全に駄目になりました!! HEATER警告 LEDが常に点くようになり、電圧を見ると 11.2V程しか
ありません。プロテクションが働くようになるのも、もう時間の問題でしょう。
という事で、改修作業に取りかかりました。


低圧トランスを取り外したところ。案の定コネクタが焦げていました。


これが、焦げたコネクタ。以前駄目になったところと同様の焦げ方です。


コネクタを使用せず、基板上のピンに直接ハンダ付け。ちなみに右側の方は、
前オーナーが既に同様な措置をした部分。やはり基板側のコネクタの白い
プラスチックに焦げた痕跡が見られます。
今回改修した方は、低圧トランスからのリード線が繋がる部分なので、
トランス脱着の際の余裕を考えて、別のリード線で若干延長いたしました。


改修後のリモコンの表示、12.6V/3.6A(片側)。これが正常です。

【追記】 その後のトラブル・・・。
2009年9月:電源ボタン押下後、「TESTのモールス音」→「全LED点灯後消灯」→「POWER ON IN PROGRESS
PLEASE WAIT xxxS」の表示までは正常だが、その後1〜2秒で「IP=220mA:SHOULD BE ZERO」(IP値の表示は
その都度変わるが190〜290mAあたりの範囲)のエラー表示が出て電源が入らなくなりました。何度か、本体スイッチの
オン・オフや AC電源の接続を外し、しばらく時間を置いて再接続等してみたが、症状は変わらず。

内部を見ても、目視できる範囲では、異常(焦げ跡、配線外れ、ゴミ、埃の集積等)は無し。
電源基板(低圧トランスの上の部分)からRFデッキへ向かう高圧のケーブルのコネクタを抜いて試したところ、同様の
症状が発生。ということは電源基板以降での高圧リーク等の異常はないことは確実。トランスから電源基板へ接続する
高圧コネクタを抜いて電源を入れたところ、通常どおり約140秒のウォームアップ後、立ち上がりました。もちろん高
圧トランスが接続されていないので「HVTOO LOW HV=0V」の異常表示はされてしまいますが。
よって、電源基板のどこかでリーク(平滑コンデンサの絶縁不良、ブリーダ抵抗の異常?)しているか、若しくは IP
センシング部分の異常動作が原因と推測されます。
国内代理店経由で(もっとも、これは10年以上前に、前オーナーが USAより輸入したもので、代理店は関係ないの
ですが)ブルガリアのACOM本社に問い合わせてもらっていた返答が来ました。電源基板のマイナス側に入っている
10オームの抵抗が怪しいのでこことシャーシ間の抵抗値を測れ!と。見事無限大でした!!

この抵抗が断線していた模様で、外付けでパラに10オーム10ワットのセメント抵抗を付けて、解決!!

この間に、円高、ユーロ安という事もあり比較的安く購入できるので、もう一台新品の 2000Aを代理店経由で購入
する事を決意! 古い方は予備機とし、何かあったときは、すべて代理店で面倒見てもらおうという魂胆。

新しい方の機体は、発注後半年近くかかってしまいましたが、無事到着。前述のヒーター回路や、その他電源基板も
一部刷新されており、10年間で細かな改良が加えられた様子が見て取れます。動作チェック後、もうしばらくは古い方を
メインで使おうと、とりあえ倉庫に。

2010年7月:古い方のアンプ、今度は、「BAIS VOLTAGE TOO LOW -98V」といった表示が出て、電源オン後
数10秒でプロテクションが働いてしまい、シャットダウンしてしまうようになりました。今回も内部を目視点検した
ところでは、異常はなく、各コネクタ類の接続も問題なし。コントローラの付け外しや、すべての接続を外して、しばらく
放置等もしてみましたが、今回は何をやっても回復せず。
もう、これは、今後の事も考えて「ブルガリア送り」にして、他の部分も含め、完全オーバーホール・リフレッシュ作業を
依頼する事にしました。時間がどれくらいかかるか、判りませんが。

その後、新しい方ほうは、当然か快調に動作していましたが、ある日突然トラブルが・・・。
2010年9月28日:帰宅後、いつもの通り電源を入れようとしたところ、約150秒のカウントダウン表示の後、小さく
リレーの音がした後「SCREEN VOLTAGEON BEFORE TIMEOUT OVER」の表示とF Eのモールス音が出て、シャット
ダウンしてしまいました。いつもの、「クォーン」というステッピングモータの特徴的な音がする前の段階です。
何度電源を入れ直しても同じで、待ち時間が経過するまではいつもと同じ 感じですが、 カウントダウンがゼロになると同時に
カチっと音がして電源が落ちてしまいます。 マニュアルにある通り、電源を切って5分間放置後再投入というのもを何度か
試してみましたが変化なし。各部目視点検するも、問題点はなさそう。

ところが翌日試してみたところ、何回に一回かは立ち上がるのです!しばらく電源入れっぱなしにして様子を見ましたが、
うまく電源が入ったときは、その後は全く問題なく正常動作するようです。ただ、どういう条件のときにうまく立ち上がる
のかは、わかりません。冷えている、暖まっている、電源断後時間が経っているかどうかは、あまり関係無いようです。
かなり気まぐれで、駄目な時は何回やっても駄目・・という感じです。
で、代理店経由でACOM本社に問い合わせたところ、無事に立ち上がったときに、STBY状態でディスプレーのMEASURE
サブメニューにある“SCREEN-V”の数値を読めとの事。この数値は、カウントダウンが終わった後は通常8〜10V、もし
15Vより高い場合、どちらかの真空管のアノードとスクリーングリッドの間でリークが起きているとの事で、その場合は
真空管の交換が必要とのことでした。ちなみにOPR状態では,ここの数値は320〜350Vが正常とのこと。

早速測ってみたところ、見事に「20V」ありました!またまた「ビンゴ」です。で、球の交換が必要な訳ですが、それまでの
緊急対処法も指示されました。電源基板 SG回路にある抵抗R25に100Kオーム2〜3ワットの抵抗をパラに繋げとの事。

多分、発生電圧を下げてコントロール回路を「騙す」手段ですね。
真空管はエージング済のペアーチューブを送ってくれるとのことで、助かりました。GU-74bの手持ちもかなりあるのですが、
エージング(バーン・イン)やペアー選別が厄介ですからね。

10月15日:交換用の真空管到着。後付けした抵抗を外し、指示された手順に従って球を交換。十分なウォームアップ後、
コントローラの“SERVICE”メニューからバイアスのセルフテストモードへ進み、逐一表示される各数値をチェック、すべて
規定範囲内におさまっている事を確認して作業終了。外した球はお約束通り返送しました。

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